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自民党新総裁とはいかなる人物か

  14日の自民党総裁選で、菅義偉官房長官が第26代総裁に選ばれた。どのような人物か、どのような政治が展開されるか。各紙から確認していこう。

 まず、読売新聞(9月15日朝刊)である。「異例づくめの」「たたき上げの」といった言葉が並ぶ。非世襲であり、無派閥、苦学生…。プリンスともいえる安倍晋三氏などと違い、異色の経歴であるのが特徴といえそうだ。

 そもそも、自民党総裁とはどのような人物がなってきたか。日本経済新聞(9月12日朝刊)がまとめている。「総裁への道」は、時代を反映してきた。高度成長期は、「蔵相・通産省→総裁」のルートが目立つ。富の再配分に関わる大蔵省や通産省が力を持った時代であることが背景にある。つづいて昭和初期の70年代以降の派閥全盛期。田中角栄氏が条件にあげたような「幹事長・経済閣僚→総裁」のルートが増えていく。しかし、平成に入ると様相が変わる。小泉純一郎氏は厚相と郵政相のみの経験だった。また、官房長官ルートも浮上した。一連の行政改革で鑑定に権限が集中したことが背景にある。菅氏もこの流れにあるのだろうか。

 さて、その人物像である。読売、日経ともにまとめているが(15日朝刊)、1948年、雪深い秋田のイチゴ農家農家の長男に生まれ、高校卒業後に上京。アルバイトをしながら学費をためて法政大学に進み、政治家秘書に。横浜市議を経て、国政進出は47歳であった。しかし、梶山静六氏が出馬した98年の自民党総裁選で派閥を飛び出し、梶山氏を支持し善戦を展開。永田町で名が知れ渡ったという。総務相時代にふるさと納税創設を主導。安倍政権を官房長官として支え、「令和おじさん」として知られるようになったのは言うまでもない。

 政治手腕はどうか。朝日(9月15日朝刊)は、「熱気なき圧勝」と指摘するが、日経(同日)は「改革派の顔」として期待を寄せる。「行政の縦割り」の改革、中でもデジタル化をどう進めるかがまずは見どころだろう。デジタル庁の創設に意欲を示しているというが、どのような手腕を発揮するか。つづいて携帯料金下げが持論という。ここは消費者に「改革」を印象付ける舞台となる。小泉氏が郵政改革をぶち上げたように。ただ、読売が指摘するように、党三役経験がなく党内基盤が強固ではない上に、気がかりは外交・安全保障といった「骨太の国家間が明確でないこと」だ。

 いまのところ、安倍政権の「継続」として消極的に選ばれた感が強い。今後、どのように「菅カラー」を打ち出すのか、注目だ。