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日本の野党はなぜ勝てないのか

 日本政治の特徴として、野党が弱い、ということが挙げられる。戦後からずっと、ごく一部の期間を除いて、野党は主張するだけで大きな塊にはならなかった。そして、分裂を繰り返す。この野党の弱さが、安倍長期政権を支えた面もある。なぜだろう?

 野党はひとまず、新たな「立憲民主党」として再結集した。だが、その内部は一枚岩ではなさそうだ。読売新聞の連載(10月5日~7日朝刊)に詳しい。野党のネックは共産党だろう。菅首相が誕生した9月16日。共産党は、首相指名で立民の枝野幸男氏に投じた。共産党の他党への投票は22年ぶりという。枝野氏は衆院で134票を集め、野党共闘の機運が高まったかにみえる。だが、「思わぬ副作用を生んでいる」という。

 共産は「大きな貸し」をつくったとするが、もともとは自衛隊廃止など「現実から乖離した主張」を掲げる。そうした政党と一体化したとみられかねないのは、立民側には大きなネックだ。共産の組織票は魅力的とはいえ、これは「禁断の果実」なのだ。例えば立民を支援する連合の会長は立共接近に不快感を示したという。自民と公明が長くひとまとまりになって行動してきたのに対し、野党はまとまろうとすると、分裂しようとするベクトルが働く。

 立民内部も一枚岩ではない。サンクチュアリ小沢グループなどさまざまなグループがある。自民党の派閥とは異なり、緩やかな集合体で、一人で複数を掛け持ちすることもあるという。これが乱立傾向で、不協和音も目立ち始めているという。

 そうなると、すぐに「第3極」を掲げて離脱する動きが出てくるのだが、これは「これまで幾度となく与党に取り込まれ、姿を消していった」道だ。独自色を発揮できなければ、たちまち自壊の道をたどることになる。

 与党は即座の解散総選挙を見送った。これは裏を返せば、「いつでも勝てる」という自信のあらわれではないか。強い野党はいつできるのか。できないのか。先の大戦で日本が敗れたのと通じる日本論、日本人論が、ここにあるような気がしてならない。