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変わるビール業界~10月酒税改正

 10月1日からビール系飲料の税額が変わり、商戦が熱を帯びているという。第3のビールは値上がり、通常のビールは値下がりするそうだ。これを機に、業界各社が戦略を練っているという。

 まず、第3のビールとは何か。読売新聞(9月23日朝刊)によると、大豆など麦芽以外の原料を使うか、麦芽使用率50%未満の発泡酒蒸留酒を混ぜたビール系飲料だという。中でも注目は、2018年3月にキリンビールが出した「本麒麟」。コクや味わいにこだわって大ヒットとなり、勢いを増した。

 さて、この第3のビールの税額(350ミリリットルあたり)は28円。これが10月1日から37・8円となり、大幅な値上げとなる。一方で、ビールは77円から70円の値下がりに。さらに、26年には双方とも54・25円にそろえるという。なぜこうするのか。財務省は、類似商品の税額の違いをなくすことで税の公平性が高まるほか、ビールの国際競争力の向上に役立つとみている。税収には影響しないという。つまりこういうことだ。日本の税額は世界でも高い方だ。ビールは米国の7倍、ドイツの14倍だそうだ。そこでメーカーは、ビールの基準から外れるビール系飲料を開発することで税逃れをしてきた。そして国は税逃れを封じ込めようとし、法廷闘争にもなった。でもこれは日本だけのこと。こういうのを「ガラパゴス化」というのだ。その力を外へ向けようよ、というわけだ。

 これを「ビール復権」とみる動きもある。例えばキリンは、主力の一番搾りに「糖質ゼロ」を投入する。そのキリンに注目したのが日経新聞の連載(9月24日~26日)である。

 キリンはアサヒビールの攻勢の前に長く負け戦が続いていたが、15年1月に就任した布施孝社長が「負け犬根性」の払しょくに注力。マーケティングを徹底した。25まで膨れたブランドを7つに絞り重点投資した。顧客本位の視点から満足できる第3のビール本麒麟」のヒットにつなげた。そして酒税改正は「一気にポジションを上げるチャンスだ」という。その切り札が一番搾り糖質ゼロというわけだ。大手4社のうち酒税改正に合わせて新商品を出すのはキリンだけだという。ゲームチェンジ。さらに注目はクラフトビールだ。米ブルックリン・ブルワリーとの資本業務提携、ニュー・ベルジャン・ブルーイングを完全子会社化。米国を中心にクラフトビールが台頭しており、一大勢力になりつつあり、成長戦略につながりそう。復活曲線を描くことになるのか。キリンに注目だ。まずは本麒麟を飲んでみよう。