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安倍長期政権の採点

 安倍首相の連続在職日数が8月24日に2799日となり、佐藤栄作元首相の記録を抜いて歴代最長となった。安倍長期政権は何をもたらしたのか。各紙がフォーカスしているが、辛い採点が目立つ。

 政権寄りともいわれる読売新聞(8月24日朝刊)は、安倍首相の掲げた「3本の矢」は「成果は限定的」と断じている。

 金融緩和、財政出動、成長戦略という3本の矢で、経済が上向いたことは上向いた。しかし、その恩恵が中流層以下へと波及したかというと、限定的だった。また。3本の矢で最も重要だった成長戦略は不十分との見方が定着しているという。確かに、既得権益打破というほどの改革は聞こえてこなかった。小泉元首相と比較すると、いまひとつ目立つ「改革感」に乏しい。

 日経(8月23日朝刊)も同様に「アベノミクスの成長戦略は見えにくい」と厳しい採点だ。安倍首相は「地方創生、一億総活躍、全世代型社会保障など毎年のように看板政策を掲げて政策のウイングを広げた」ことで、野党が掲げる政策に抱きついて違いを見せにくくした面もある、と指摘する。

 一方で、レガシー(政治的遺産)となると乏しい。拉致問題やロシアとの北方領土交渉では前進がない。では、安倍長期政権は何だったのか。

 日経、朝日にコメントしている御厨貴氏が実に的確だ。

 日経では、「これまでうまくいった秘訣は、次々に看板を替えて「やっている感」を出したことだ。しかし新型コロナウイルスの感染拡大が起こり、「やっている感」政治が止まってしまった。一気に弱点が露呈した」という。また、「政権が成し遂げた最大の成果は衆院選参院選で一度も負けなかったことだ。勝って野党と報道機関を黙らせてきた」と。確かに、選挙での強さこそが、安倍長期政権の最大の特徴だ。

 興味深いのが2014年10月、「政治とカネ」と問題で2閣僚が辞任し、政権が揺らいだかに見えた時期。ここで首相は野党が選挙準備を整える前に解散に踏み切り、難局を「リセット」することに成功した(朝日新聞8月24日朝刊)。

 選挙で勝つことで、さまざまな問題、スキャンダルを「チャラ」にしてきたのが安倍政権だ。一方で、佐藤栄作沖縄返還ほどのレガシーはない。憲法改正も進まない。結局は、「個々の中身よりは、続いたってことにレガシーがある」と、同日付朝日で御厨氏は、なんともいえない結論を導き出している。