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米大統領選の行方

 米民主党大会で、ジョー・バイデン前副大統領が大統領候補に正式指名された。どのような人物なのか。新聞各紙から、探ってみた。

 日本経済新聞(8月20日)によると、波乱の人生を歩んでいるようだ。まず、計44年の国勢経験を持つ党の重鎮。勝てば米国史上最高齢の大統領となる。

 東部ペンシルバニア州の地方都市スクラントンが生まれ故郷。父親は中古車のセールスマンなどを点々として生計を立てた。大学を出て弁護士になり、地元政治にかかわるように。30歳で連邦議会上院議員になり、主要ポストを歴任。2009年からはオバマ大統領に8年間仕えた。これだけみると順風満帆にみえるが、そうではない。大統領選には2度挑戦したがいずれも途中で脱落。私生活では、交通事故で妻と1歳の娘を亡くしている。長男は脳腫瘍で46歳で死んだ。一方で、失言癖もあるという。トランプ氏打倒の万全の候補というわけでもなさそうだ。

 読売新聞(同日)によると、党内の支持を得るため、最低賃金の引上げなど、急進左派に配慮した政策を随所に盛り込んでいるという。ただ、譲らなかったのが国民皆保険。左派に寄りすぎれば、「バイデン陣営は極左に乗っ取られた」とトランプ氏に攻撃材料を与え、中道票を失いかねないからだ。

 では、そのほかの政策はどうか。朝日新聞(同日)によれば、外交では、孤立が際立つトランプ氏とは対照的に、国際協力、国際協調が主力モードになりそうだ。具体的には、世界保健機構(WHO)、地球温暖化対策のパリ協定、イラン核合意などの復帰だ。一方で、対中国政策は大きく変わらない。ただ、トランプ氏と違って、中国国内の人権問題には関心が高いようだ。経済政策では、自由貿易重視への復帰というわけでもなさそう。

 独断型のトランプ氏と調整型のバイデン氏。これからの論争で、よりその違いが際立っていくことだろう。最新の世論調査ではバイデン氏が優勢というが、その差は縮まってきている(日経8月21日)。隠れトランプ支持者も多くいるとみられ、どうなるかは全くわからない。