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変わらぬ日本への怒り

日経新聞といえば、政治的な主張は中立のようなイメージがあったが、新型コロナウイルスへの政府対応をめぐっては批判的なトーンが目立つ。批判を超えて「怒り」すら感じられる。何への? 変わらぬ日本型組織そのものへの、だ。

 6月9日に始まった5回連載「検証コロナ 危うい統治」を面白く読んだ。まず初回、一向に進まないPCR検査などを例に挙げ、日本の官僚機構の機能不全を指摘。「共通するのは失敗を認めれば自らに責任が及びかねないという組織としての強烈な防衛本能だ、前例や既存のルールにしがみつき、目の前の現実に対処しない」と厳しい。「20世紀型の官僚機構を引きずったままでは日本は世界から置き去りにされる」とまで言い切っている。

 2回目はデジタル化がテーマ。オンライン診療をめぐる壁に焦点を当てた。ある開業医の証言が印象的だ。「『都市部の医師やデジタルに詳しい若い医師に患者が流れる』との反対が地方に多い」。これは教育現場でも同様だ。しかし、デジタルに距離を置き続けるならば、結局損をするのは国民である。

 3回目は「つぎはぎ行政」。これも意外と興味深かった。雇用調整助成金の申請代行をする社会保険労務士を例に、制度の機能不全を描く。「労働、税、法務。多くの分野に専門家を挟み。、プロでなければ使えないシステムをかんじがらめで作る日本。それがデジタル化を遅らせ、改革を阻む」。そう、日本の官僚機構の弊害の一つは、ほっておくとどんどん仕事や制度を増やしてしまう、という点にある。予算も人も手間もかかる一方。だから増税しかなくなる。はっきりいって面倒な組織なのだ。

 4回目は「民」の役割。韓国など給付金配布がスピーディな国々と比べて日本は何がダメなのか。日本は「政策に民の知恵を生かさない国」なのだ。一方で、持続化給付金の例を挙げるまでもなく、民間への不透明な業務委託がある。この国はいったい、何をやっているのか。その出口は、最終回「官邸主導」である。官僚機構の行き詰まりを打破するには、政治主導、官邸主導しかない。しかしこれはまだ未完のプロジェクトである。連載は「官邸主導で臨むべき日本の宿題は改めて浮かび上がっている」と結んでいる。

 コロナを乗り越え、どのような政治体制が主流になっていくのか。世界の潮流に注目だ。確実なのは、その中で日本は取り残される、ということだ。