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9月入学はあり?なし? コロナは社会を変革するか

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、学校の始業や入学時期をずらす「9月入学」の話題がぽつぽつと持ち上がってきた。どうせ本気じゃないだろうと思っていたら、日経新聞は結構乗り気で持ち上げている。ビジネス界では推進派が多いのだろうか…。

 5月13日付によれば、日経新聞のアンケートに対し、知事の6割が賛成したという。また、自民党は12日に検討ワーキングチームの初会合を開いたという。G20では、4月入学は日本とインドだけ。時期のずれは留学の壁になり、「日本の大学の国際化が遅れる一因とみられている」と指摘する。表によると、世界では留学者数が増えているが、日本は横ばい。ただし、アルゼンチンや韓国は3月入学、オーストラリアやブラジル、南アフリカは1月とばらつきもある。

 課題は何か。11日付で、早稲田大学総長の田中愛治氏は、9月入学だけで留学が盛んになるわけではなく、4月、9月双方、日本語、英語双方の教育の提供や、必要単位取得で自由にどの学期でも卒業できるようにするなどの制度改革で、国際化を進めることは可能だとし、「真の国際化の実現は形式的に欧米の制度を模倣することではない」と述べる。また、9月入学にしてしまうと、春学期分の授業料が入らないので、私学の2割~4割がつぶれてしまう(!)。また、4月から9月へという「後ろ倒し」には大卒人材の社会進出が1年分遅れてしまうという問題がある(米国は21歳半、日本は22歳半となる)。

 朝日新聞(12日付)によれば、同様の議論は、中曽根内閣時に諮問機関の臨時教育審議会で検討されたという。その後も、大学審議会などで議論はされてきた。東京大学も2011年に検討を始めたが、学内の合意が得られず13年に見送った経緯がある。

 利点としては、学習の遅れを取り戻し、中止した運動会などの行事をやり直すことができる。長い夏休みを学年の変わり目に置くことで、学校運営がやりなすくなる、などを挙げている。

 しかし課題は日経とも重なるが、なんといっても進学・就職が5カ月遅れること。移行期の授業料を家庭か学校のどちらが負担するのか?また、「半年遅れ」を解消するために1年半分の児童をドッキングすれば、来年9月入学の小学1年生は約1・4倍の人数となる可能性があるという。こうすることで大卒人材の「遅れ」はこの年代の子が大卒になる時点で解消できるのだろうが…。

 企業や自治体の会計年度のずれをどうするかなどと、教育だけでは済まない問題が出てくるだろう。となると、9月入学はたぶん無理だろうと推察する。

 というか…。結局、コロナ禍もあと1カ月もすれば、何事もなかったようになるんじゃないかな。そう、社会はさほど変わらないのではないか。東日本大震災原発事故の後も、原発が稼働したように。ただ、「働き方」は変わっていくかもね。テレワークが広がったことで、ふだんの仕事の無駄を、多くの人が感じただろうし、後戻りできないだろう。これこそが、コロナ禍で社会が得た「収穫」かもしれない。