さくっと分かるニュースの見方

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検察高官とマージャンはありか?なしか?

 週刊文春の久々の文春砲(5月28日号)によって明るみに出たのが、黒川弘務・東京高検検事長(当時)への新聞記者による接待賭けマージャンだ。いろいろな視点がありうると思うが、ここでは記者と情報源との距離について考えてみたい。

 同誌では、産経新聞記者の都内のマンションに黒川氏がやってきて、ほかの記者たちとともに”三密”な空間で、未明までマージャンに興じた。そして、記者が用意したハイヤーで帰宅した―。そんな一部始終が描かれている。

 これを受けて産経新聞は「賭けマージャンは許されることではない(中略)厳正に処分してまいります」。同席の記者がいたという朝日新聞も「適切に対応します」などとコメントした。

 毎日新聞5月22日付では、ジャーナリストの大谷昭宏氏がコメントしている。曰く「緊張感のかけらもなく、ズブズブでいびつな関係を築いただけ」と厳しいが、「この件をもって記者の牙を抜いてしまうようなことがあってはいけない」とも言う。「個々の取材手法については、法律違反は許されないが、社会通念に照らして異常でなければ容認されるべきだ」と。それが「読者にディープな情報」を届けることに資するからだ。一方で、慶応大教授の鈴木秀美氏は、接待マージャンとなれば間接的に金銭を渡して情報を得るようなものであり「守るべき一線を越えてしまっていたのではないか」と指摘。「記者たちは、報道倫理について改めて考えを巡らせてほしい」と結ぶ。

  「ディープな情報」を扱ったことで有名な映画といえば「大統領の陰謀」。そこでは、主人公の記者が地下駐車場で取材源=ディープスロートと会い、ヒントをもらうシーンが描かれていた。こうして権力者(大統領)陰謀の内幕を少しずつ暴いていくわけだが、そもそも、その取材源とはどうやって関係を構築したのか?は明らかになっていなかった。素人目からすると、黒川氏のマージャン好きを足掛かりに、近づいていくというのも、一例としてはありなのか?と思ってしまうところではある。しかし現代のコンプライアンス的には「アウト」なようだ。